【 第9章 2023年度生用 教育課程(学部別)】
文学部
歴史遺産学科

1. 歴史遺産学科教育理念

(1)教育研究上の目的

文学部は、幅広い教養や専門的知識を身につけ、社会で活躍するための人材を養成する。文学部歴史遺産学科は、歴史遺産を対象とする研究をおこない、その歴史的・文化的意義を解明するとともに、歴史遺産を適切に活用した社会を創造する意欲を身につけた人材を育成することを目的とする。

(2)ディプロマポリシー(学位授与方針)

文学部歴史遺産学科は、教学理念および学部・学科の教育研究上の目的に則り、歴史遺産についての知識、技術を身につけ遺産の保全や活用できる人材、社会人として自立できる知識や能力、素養をもち、他者への配慮をおこたらない人材を養成することをめざしている。そのために歴史遺産学科では、この教育目標に基づき、次のような能力を身につけ、所定の単位を修得した者に学士(文学)の学位を授与する。

  • ① 文化遺産を活用できる能力を持つことで社会での文化創造に寄与しようとする意欲を身につけている。
  • ② 文化遺産の調査・記録方法、そのプレゼンテーション能力を身につけている。
  • ③ 文化遺産の取扱や保存管理の知識をもち、研究に高めるための技術と方法を身につけている。
  • ④ 課題を設定し、資料を集め、観察、分析、考察を行う手順を修得する能力を身につけている。
  • ⑤ 現代社会に関する基本的な認識と対応能力を身につけている。
(3)カリキュラムポリシー(教育課程の編成・実施方針)

学位授与に必要とされる能力(ディプロマポリシー)を修得するために、文学部歴史遺産学科では、以下の方針で教育課程を編成する。

  • ① 人類の所産のうち、考古資料、彫刻、絵画、工芸品、歴史資料などの動産遺産と、建造物、近代化遺産、都市・文化的景観、史跡、埋蔵文化財といった土地に定着した不動産遺産、これら2つの領域の文化遺産情報を対象とした科目を配置する。
  • ② 1回生時に、文化遺産に関する基礎的知識と文化遺産に接する姿勢を幅広く身につけるために「歴史遺産総合演習」などの科目を配置するとともに、各領域にわたるモノやフィールドごとの観察や鑑賞、調査の仕方、研究史、研究方法の違いを知り、調べたことを発表、報告、文章化するプレゼンテーション能力を身につけるため「研究入門ゼミ」を配置する。
  • ③ 2回生時に、自ら調査した内容を分析し、まとめる力を身につけるため「歴史遺産学基礎ゼミ」と、実習を通して取扱い方法や保存管理技術、知識を体得する「歴史遺産学実習」を必修科目として配置するとともに、専門研究に必要な技術や方法を学ぶための「考古学研究」「建築遺産研究」「歴史遺産研究」「美術工芸史研究」、遺産の特性に応じた調査方法を学ぶ「歴史遺産調査実習」、文献史料の読解力を修得する「文献史料学」を選択必修科目として配置する。学生は、選択必修科目の履修により、専門領域を2つ以下に絞り込む。
  • ④ 3回生時から、考古学、美術工芸史、古文書、歴史遺産のいずれか1つの領域を専門とする「考古学コース」「美術工芸史コース」「歴史遺産コース」を置き、学説の分析やその批判、先学を含めてそれらを自らのテーマへ再構築するための「歴史遺産学演習 Ⅰ・Ⅱ」を配置する。
  • ⑤ 4回生時に、課題を設定し、資料を集め、観察、分析、考察を行う手順を修得するための「歴史遺産学演習 Ⅲ・Ⅳ」を配置するとともに、「卒業研究」を行う。
  • ⑥ 2級考古調査士の資格取得を目的に「文化財行政論」「考古学研究 」「考古学研究 」の必修科目や「保存科学」「遺産環境論」といった選択科目などを配置する。
  • ⑦ 在学中に獲得した力を卒業後、社会に出て十分に活かすことができるように、現代社会に関する基本的な認識を養い、各分野の今日的なトピックを中心に授業を進める教養教育科目群(基礎教育科目群・教養教育科目群・キャリア教育科目群)を配置する。

2. コースの特徴

考古学コース
人類が残した活動の痕跡から過去を考えるのが考古学である。このコースでは遺跡に残った建物などの遺構、土器・石器・木器などの遺物を主に対象とする。これらは地球上全体に残っていることから、文字資料だけでは知ることができない過去を語ることができる。そのためにまずは客観的な調査記録を作成し、報告書を発行し、将来の人々に残す保存処置を講ずることになる。考古学は様々なものを取りあつかうことから発掘調査や出土遺物の整理のための技術は日々進歩する。今ある学説も新しい知見で判断環境が変わり、仮説が修正される。そのつどの新しい観察や分析方法をとりいれ、過去を再構築して研究していく。総合的な性格を持つことからいろいろな分野とのチームワークも必要とされる。このようなことを下地に、総合的な学問体験を通して、連携、分析、解釈、洞察力を養う。
美術工芸史コース
美術工芸史コースは、時代や地域をこえて、人間の生活と精神の営みによってつくり出されてきた絵画・彫刻・工芸などの美術工芸品や、古文書・典籍および民俗伝承資料などの歴史資料を研究対象とする。美術工芸品に対しては、緻密な観察に基づいてその特徴や制作技法・制作背景を分析することが必要であり、歴史資料に対しては、資料を読み解くことで当時の人々の暮らしや社会のあり方を明らかにしていくことが求められる。そのため、作品や資料の扱いに習熟し、整理・分析・読解・記述の方法を体得する実習を重視し、博物館・美術館・寺院などでの豊富な学外授業を通して実際の作品・資料に触れ、現物に即した調査・研究を行っていく。それらの学びを通じて、専門家としての知見を備えるとともに、社会人に求められる的確な分析力、論理的な思考力を身につける。
歴史遺産コース
建造物、近代化遺産、文化的景観、記念物、史跡について、その歴史的な価値を分析・評価し、現在における活用法、未来への保存方法を学んでいく。そのための基本的な学びとして、文化遺産情報を管理するための実習を基礎的な科目として位置づける。すなわち、現地保存される文化資産(資源)を訪れて調査し、集めた情報を整理・管理する方法を修得した上で、対象を体系だてる歴史遺産への枠組へと高め、さらに社会で活用するために加工する方策を創出、検討していく。以上のような教育実践を通じて、歴史遺産に対する理解と洞察力を修得し、多様な情報が氾濫する現代社会で広く深い文化的思慮をもって価値判断あるいは企画立案できる人材を育成する。

3. 各回生の到達目標

ディプロマ・ポリシー(DP)

  • ① 文化遺産を活用できる能力を持つことで社会での文化創造に寄与しようとする意欲を身につけている。
  • ② 文化遺産の調査・記録方法、そのプレゼンテーション能力を身につけている。
  • ③ 文化遺産の取扱や保存管理の知識をもち、研究に高めるための技術と方法を身につけている。
  • ④ 課題を設定し、資料を集め、観察、分析、考察を行う手順を修得する能力を身につけている。
  • ⑤ 現代社会に関する基本的な認識と対応能力を身につけている。
1回生

全コース共通

  • ① 文化遺産に接する姿勢をまず身につけ、それらに関する基礎的知識を身につける。
  • ② 考古資料、絵画、彫刻、工芸、歴史資料などのモノを中心にした動産遺産と、建造物、近代化遺産、文化的景観、史跡、埋蔵文化財といった土地に定着した不動産遺産など、専門領域の基礎的知識を幅広く身につける。考古学や建築・都市史関係は現地を訪れ、現物に接することで、対象物に興味をもってその過去・現在を時間的に比較する。美術工芸史関係は美術工芸作品や文書史料などを実見することで、その美的価値や歴史的意味を深く考える。
  • ③ 調べたことを発表する、報告する、文章にするといったプレゼンテーション能力を身につける。
  • ④ 各領域にわたるモノやフィールドごとでの観察や鑑賞、調査の仕方、研究史を学び、研究方法の違いも知る。
2回生

全コース共通

  • ① まず身近にある考古資料、絵画、彫刻、工芸、歴史資料などの動産遺産や、建造物、近代化遺産、文化的景観、史跡、埋蔵文化財といった不動産遺産についての専門研究に必要な技術や方法論を学ぶ。考古学や建築・都市史関係はモノを比較し、調査記録を作成する能力を養い、収集したものを分類、説明できるようにする。美術工芸史関係は美術工芸作品や文書史料についての調査・資料収集の方法を学び、作品や史料から情報を獲得した上で、それらを分析する力をつける。
  • ② 実際の調査や実習を通じ、取扱い方法や保存管理技術や知識を体得する。
  • ③ 文献史料の読解力、そしてその思想や社会のしくみを見通す能力を高める。自主的に調査した内容を分析し、まとめる力をつける。
3回生

全コース共通

  • ① 小地域から東アジア、世界におよぶ地域文化について、より踏み込んだ専門研究の内容を理解する。
  • ② 探求心を持ち、調査に必要な技術を応用・実践した内容を分析し、まとめる力をつける。

考古学コース

  • ③ 学説の分析やその批判、先学を含めてそれらを自分の研究テーマへと再構築する。そのことがらを人と議論して、さらに検討することができる力を身につける。収集・分類したモノの内容を分析し、論理の展開を考える。

美術工芸史コース

  • ③ 研究史をふまえて学説の分析やその批判を行い、自分の研究テーマへと再構築する。そのことがらを人と議論して、さらに検討することができる力を身につける。美術工芸史や文書史料を把握するとともに、個別研究の論点と課題を発見する。

歴史遺産コース

  • ③ 学説の分析やその批判、先学を含めてそれらを自分の研究テーマへと再構築する。そのことがらを人と議論して、さらに検討することができる力を身につける。調査、記録した情報を分類・整理し、分析する。
4回生

全コース共通

  • ① 課題を設定し、資料を集め、観察、分析、考察を行う手順を修得する。
  • ② 歴史遺産学について自らの考えを持つことが出来るようにする。
  • ③ 歴史遺産学の学修を通して得た学びの成果を、実践で応用できるようにする。

考古学コース

  • ④ 専門研究を深化させ、自己の意見を表現できる力をつける。研究の方法論を自ら見つけ、理論的に分析・検討することを通じて、着実な卒業研究に結びつける。

美術工芸史コース

  • ④ 研究史をふまえて学説の分析やその批判を行い、自分の研究テーマへと再構築する。そのことがらを人と議論して、さらに検討することができる力を身につける。美術工芸史や文書史料を把握するとともに、個別研究の論点と課題を発見する。

歴史遺産コース

  • ④ 専門研究を深化させ、自己の意見を表現できる力をつける。研究の方法論を自ら見つけ、理論的に分析・検討することを通じて、着実な卒業研究に結びつける。

ディプロマ・ポリシー(DP)

各回生の学習目標
学習目標についてはこちらを参照ください。

4. 履修条件

本学では、系統的で継続性のある効果的な学習を実現することを目的として、一部の科目に履修条件(履修制限)を設定しています。

【考古学コース・美術工芸史コース・歴史遺産コース】全コース共通

対象科目 【 3回生配当科目 】「歴史遺産学演習 Ⅰ・Ⅱ
履修条件 2回生終了までに総修得単位が40単位以上であること。

5. 卒業研究

卒業論文、卒業研究および卒業制作は4年間の学修の集大成をなすものとして重視されています。
卒業論文、卒業研究または卒業制作を提出し、合格することが卒業するための必要条件です。なお、提出後には、口頭試問も行われます。
論文の表紙等は指定されているものがあります。ゼミの教員の指示に従ってください。

受付期間および時間
受付期間および時間については別途掲示をします。必ずそちらを確認してください。
  • 本人以外の提出、郵送による提出は受け付けません。
  • 提出時には、必ずコピーを1部とり、正本は学務各課へ提出し、コピーはゼミ担当教員へ提出してください。
  • 様式や分量等については、学科ごとに次のように決められています。
歴史遺産学科
本文12,000字〜20,000字程度とします。なお、詳細は各ゼミで指導します。
ポータルサイト配信の確認を習慣に

学生のみなさんに対する連絡は、ポータルサイトへの配信によって行います。
配信されたものについては各自確認されたものとして取り扱いますので、毎日の習慣として必ず内容を確認するようにしてください。

【ポータルサイトの利用方法】
『 在学生の方へ 』のページからポータル(ユニパ)をご確認ください。