作業療法学科

1. 作業療法学科教育理念

(1)教育研究上の目的

健康科学部は、心理、医療の各分野の専門的知識や技術を習得し、幅広い教養と豊かな人間性を身につけ、新たな課題に対応できる問題解決能力を備えた人材を養成する。作業療法学科は、身体や精神、発達などに障害を伴うクライアントを対象に、あらゆる作業を通して心身機能の回復を図り、クライアントの望む生活を支援するための知識と技能を修得し、地域社会に貢献する作業療法士を養成する。

(2)ディプロマポリシー(学位授与方針)

健康科学部作業療法学科は、教学理念および学部・学科の教育研究上の目的に則り、次のような知識・能力を身につけ、所定の単位を修得した者に学士(作業療法学)の学位を授与する。

  1. ① 幅広い教養と能動的に学習する姿勢を身につけている。
  2. ② 作業療法を行う上で基礎となる医学および作業の知識を身につけている。
  3. ③ 評価から計画、実施まで作業療法のプロセスを理解し実践する技能を身につけている。
  4. ④ クライアントに関わる他の職種に敬意を払い、チーム・アプローチを実践する態度を身につけている。
  5. ⑤ 疑問に対して科学的手法を用いて検証する技能を身につけている。
  6. ⑥ 地域課題に気づき、それを解決する手段や資源を活用する問題解決能力を身につけている。

(3)カリキュラムポリシー(教育課程の編成・実施方針)

学位授与に必要とされる能力(ディプロマポリシー)を修得するために、健康科学部作業療法学科では、以下の方針で教育課程を編成する。

教育課程の編成

  1. ① 幅広く豊かな教養と視野を身につけるため、人文科学、社会科学、自然科学などの幅広い分野の科目を開講する。
  2. ② 対象者のニーズに合わせたより質の高い包括的な医療の提供や安全な医療制度の持続可能性に寄与するために、必要な基礎的知識および専門職者間の連携や協働を学ぶ「たちばなチーム医療科目群」を開講する。
  3. ③ 将来、作業療法士として活躍することを早期に自覚し大学での学びの動機づけを行うため、初年次に「キャリア教育科目群」を配置する。また、初年次から臨床実習を配置し、知識と実践とを連動させた体系的なキャリア教育を展開する。
  4. ④ 作業療法士に必要となる基本的な知識と技術を身につけるため、専門基礎分野に「人体の構造と機能および心身の発達」「疾病と障害の成り立ちおよび回復過程の促進」「保健医療福祉とリハビリテーションの理念」の科目群、ならびに作業の科学性への関心を高め応用技術を身につけるため、「作業科学」「作業学演習」を配置する。
  5. ⑤ 作業療法士に必要となる専門的な知識と技術を身につけ、専門性の深化を促すために、専門分野に「基礎作業療法学」「作業療法管理学」「作業療法評価学」「作業療法治療学」「地域作業療法学」の科目群を配置する。
  6. ⑥ 作業療法士としての知識や実践的な技術を段階的に修得するとともに、臨床の知・技術として醸成を促すため、4年間を通じて「臨床実習」を配置する。最終学年では総合的な知識・技術の整理・確認の機会として長期間の臨床実習を配置する。
  7. ⑦ 身につけた知識や技術の深化・統合を図り、自ら設定した課題に対して科学的手法を用いて検証する力を身につけるため、4回生時に「卒業研究」を配置する。

教育方法

学生が体系的に学びを進めるなかで、各科目の到達目標に達し、ディプロマポリシーに示す能力等を修得できるよう、次のように教育を行う。

  1. ① シラバスや履修の手引き等に、カリキュラムマップや科目の到達目標・授業計画等を明示し、学生に履修・学修の指導を行うことで、学生の体系的な学びを促進する。
  2. ② 多様な授業形態のなかから、各科目の到達目標・内容に適した形態で授業を行うことで、学生の理解を促進する。

学修成果の評価

ディプロマポリシーに示す能力等の修得度合としての学生の学修成果は次のように評価する。

  1. ① ディプロマポリシーに則した到達目標や成績評価方法を科目ごとに設定し、シラバス等で明示したうえで、成績段階を決定する。

2. 教育課程

(1)カリキュラムのねらい

これからの作業療法士は、病院だけでなく地域(在宅訪問、包括支援センターなど)、行政、起業など幅広い活躍の場があります。このように多様なニーズに応えるためには、より高度な専門知識と社会ニーズに対応できる思考力・実践力を学ぶことが求められています。本学科のカリキュラムは、「精神や身体、発達などに障害を伴うクライアントや引きこもりなど社会適応に支障をきたしている人を対象に、あらゆる作業を通して心身機能の回復を図り、クライアントの望む生活や社会参加を支援するための知識と技能を修得し、地域社会に貢献する作業療法士を養成する」ことを目的に構築しております。
京都橘大学の教育理念である「自立」・「共生」・「臨床の知」を実践するため、専門分野にとらわれない複眼的で柔軟な思考力、他者を尊重し、互いに共感・協働できる建設的な人間関係、心身両面の基礎的な臨床能力の構築に主眼が置かれています。そのためには、作業療法学や医学に関する専門的知識と技術を中心に据えつつ、人文・教育・社会・医療系をもつ総合大学のメリットを活かして、幅広い教養と高度なコミュニケーション力、学生の「自己教育力」や主体的な判断力と応用力の養成にも重点を置いたカリキュラムを展開しています。

(2)各回生の到達目標

ディプロマ・ポリシー(DP)

  1. ① 幅広い教養と能動的に学習する姿勢を身につけている。
  2. ② 作業療法を行う上で基礎となる医学および作業の知識を身につけている。
  3. ③ 評価から計画、実施まで作業療法のプロセスを理解し実践する技能を身につけている。
  4. ④ クライアントに関わる他の職種に敬意を払い、チーム・アプローチを実践する態度を身につけている。
  5. ⑤ 疑問に対して科学的手法を用いて検証する技能を身につけている。
  6. ⑥ 地域課題に気づき、それを解決する手段や資源を活用する問題解決能力を身につけている。
1回生
  1. ① 幅広い教養を主体的に学ぶことが出来る
  2. ② リハビリテーションの諸理念を理解できる
  3. ③ 医療人としての遵守すべき態度を身につける
  4. ④ リハビリテーションチームとそれぞれの専門職の役割を理解する
  5. ⑤ 現象に対して疑問を持てる
  6. ⑥ 地域課題を発見する力を身につける
2回生
  1. ① 社会人として必要な道徳観や人間性を身につける
  2. ② 基礎医学の知識や基本的な検査・測定技術を身につける
  3. ③ 作業療法士の業務と役割を理解する
  4. ④ 他職種との連携を理解する
  5. ⑤ 疑問や課題を探究していく姿勢を身につける
  6. ⑥ 在宅支援の援助法を身につける
3回生
  1. ① これからの人生で直面する問題を解決していくための知識を身につける
  2. ② 作業療法の知識と技術を身につける
  3. ③ クライアントを評価し作業療法評価計画を立案できる
  4. ④ 他職種と連携するための知識と技術を身につける
  5. ⑤ 研究疑問を具体化し、自身が目指す作業療法を明確にできる
  6. ⑥ 地域で自立した生活を送る支援をするために必要な知識や技術を身につける
4回生
  1. ① 物事を論理的に分析し、正しい判断が出来る
  2. ② 作業療法の展開や臨床思考過程を身につける
  3. ③ クライアントの評価をもとに作業療法が展開できる
  4. ④ 他職種と連携しながらチーム・アプローチが実践できる
  5. ⑤ 作業療法研究を行う上で必要な研究技法を身につける
  6. ⑥ 地域課題を解決する手段や資源を活用する能力を身につける
ディプロマ・ポリシー(DP)

(3)カリキュラムの概要

本学科のカリキュラムは、幅広い教養の習得を基盤とし、作業療法士養成校として資格取得に必要な基本的な科目を1回生からバランスよく配置しています。また、早い段階から自身が目指す作業療法を明確にし、3回生からはより専門的な作業療法を学習できるコース別科目群を設定しています。さらに、医学系の科目に心理学領域の科目や地域課題領域の科目を有機的に関連させ、からだとこころの両面から作業療法を創造できる「真に人の役に立てる作業療法」を目標においたカリキュラムを構成しています。

教育目標 1回生 2回生 3回生 4回生
幅広い教養と能動的に学習する姿勢を身につける 人文科学(語学系・哲学系)、社会科学、自然科学:計 必修7科目、選択必修56科目を準備
作業療法を行う上で基礎となる医学および作業の知識を身につける 人体の構造と機能演習Ⅰ・Ⅱ
運動学
運動生理学
人間発達学
作業療法学概論
作業科学
医療と生命の倫理
医療リスクマネジメント
リハビリテーション概論
人体の構造と機能実習Ⅰ・Ⅱ
画像診断学
日常生活支援学
高齢期作業療法学
リハビリテーション工学
臨床心理学
公衆衛生学
作業療法管理学
身体機能作業療法学(運動器・内部障害)
身体機能作業療法学(中枢系)
精神機能作業療法学
発達期作業療法学
高次脳機能作業療法学
義肢装具学
感覚統合療法
認知症作業療法学
健康心理学
作業療法総合演習
臨床医学科目群
(病理学、内部障害、運動器障害、精神障害など)
演習科目群
(作業学演習Ⅰ・Ⅱ、運動学演習、日常生活支援学演習、各種作業療法学演習など)
評価から計画、実施まで作業療法のプロセスを理解し実践する技能を身につける 作業療法評価学群 作業療法技能学 作業療法技能学

臨床見学実習 臨床検査実習 臨床評価実習
地域実習
総合臨床実習Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ
クライアントに関わる他の職種に敬意を払い、チーム・アプローチを実践する態度を身につける こころとからだの健康科学Ⅰ・Ⅱ 言語聴覚療法
疑問に対して科学的手法を用いて検証する技能を身につける キャリア開発演習Ⅰ・Ⅱ 作業療法研究法演習Ⅰ・Ⅱ
【 地域の医療と福祉コース 】
作業療法技術学、卒業研究
【 こころとこどもの支援コース 】
作業療法技術学、卒業研究
地域課題に気づき、それを解決する手段や資源を活用する問題解決能力を身につける 地域作業療法学
地域作業療法学演習
地域包括ケアシステム演習
生活環境論
ヘルスプロモーション作業療法学
職業リハビリテーション

(4)履修条件

本学では、系統的で継続性のある効果的な学習を実現することを目的として、一部の科目に履修条件(履修制限)を設定しています。

科目名 履修条件
臨床見学実習

1回生前期までの専門基礎分野および専門分野の必修科目4科目のうち3科目以上を修得済みであること。

指定4科目

「人体の構造と機能演習(骨・関節・筋・神経など)」「作業療法学概論」「作業学演習」「作業学演習

臨床検査実習

2回生前期までの専門基礎分野および専門分野の必修科目25科目のうち23科目以上を修得見込みであること。

指定25科目

「人体の構造と機能演習( 骨・関節・筋・神経など)」「人体の構造と機能演習(呼吸・循環系、消化系など)」「人体の構造と機能実習( 構造系)」「運動生理学」「運動学」「運動学演習」「人間発達学」「病理学」「内部障害基礎論」「運動器障害基礎論」「精神障害基礎論」「神経障害基礎論」「発達障害基礎論」「リハビリテーション概論」「作業療法学概論」「作業科学」「作業療法評価学」「作業療法機能評価学演習」「作業学演習」「作業学演習」「レクリエーション演習」「日常生活支援学」「高齢期作業療法学」「地域作業療法学」「臨床見学実習」

作業療法技術学Ⅰ・Ⅱ
作業療法研究法演習
地域実習
作業療法技能学

「臨床検査実習」を修得済みであること。

臨床評価実習

3回生前期までの専門基礎分野および専門分野の必修科目を全て修得見込みであること。
また、3回生後期における専門基礎分野および専門分野の必修科目について7科目のうち5科目以上と「作業療法技能学」を修得見込みであること。

指定7科目

「地域包括ケアシステム演習」「作業療法管理学」「作業療法研究法演習」「身体機能作業療法学(中枢系)」「精神機能作業療法学演習」「発達期作業療法学演習」「義肢装具学演習」

作業療法技能学

「臨床評価実習」を修得済みであること。

総合臨床実習Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ

「作業療法技能学」を修得見込みであること。

※ 「修得見込み」とは、試験等の結果により、当該科目の単位を認められることが確実であることを指す。

(5)ラーニングコース

3回生より「ラーニングコース」の科目を選択履修するとともにゼミや卒業研究を行うことで、より深い専門的知識と技術を身につけた作業療法士を育成します。またこのラーニングコースでは、将来対象とする疾患や働きたい施設の種類など、学生自らが具体的な進路を考える契機となるよう指導を行います。

地域の医療と福祉コース

高齢者や障害者の心身機能や地域医療・福祉における国内外の作業療法に関する最新の研究成果について学びます。少子高齢化の進む日本社会では、高齢者や心身に障がいを持った人たち、難病、癌など、予防・医療・ケアの必要な人がますます増えていくことが予測されます。そのような社会環境の中で、病院や介護・福祉施設、在宅医療などでそれぞれの課題と向き合い、多様な価値観を持ちながら地域で暮らす人たちを支える作業療法士をめざします。

こころと子どもの支援コース

心に病を持つ人の地域での生活や、就労を支援するための知識と技術を身につける。また、行動や情緒に配慮が必要な子どもに対して神経学的にアプローチする知識と技術を学び、直面する課題に対して子どもの将来を見据えながら解決方法を考える力を修得します。作業療法によって障害を抱えている人の生活を変え、社会参加を実現できる作業療法士をめざします。

3. 取得できる資格